多様性を尊重していくためには人権感覚を磨くことが大切です。

多様性を尊重していくためには、人権を尊重していく行動が必要です。そして、その行動の構成要素として人権感覚が挙げられます。

 

人権感覚という言葉は、学校教育ではよく使用される言葉です。しかしながら、公的な説明や具体的な学校教育における場面を想像することが難しいという言葉をよく耳にします。

この記事では、多様性を尊重するために大切な人権感覚について説明をします。

 

人権感覚とは

人権教育の目的を達成するためには、人権や人権擁護に関する基本的な知識を確実に学ぶと共に、人権感覚を育成することが大切です。つまり、人権に関する知的理解と人権感覚が結合することで、自他の人権を尊重する実践行動につながります。

文部科学省は人権感覚について以下のように説明をしています。

「人権感覚とは、人権の価値やその重要性にかんがみ、人権が擁護され、実現されている状態を感知して、これを望ましいものと感じ、反対に、これが侵害されている状態を感知して、それを許せないとするような、価値志向的な感覚である。「価値志向的な感覚」とは、人間にとってきわめて重要な価値である人権が守られることを肯定し、侵害されることを否定するという意味において、まさに価値を志向し、価値に向かおうとする感覚であることを言ったものである。このような人権感覚が健全に働くとき、自他の人権が尊重されていることの「妥当性」を肯定し、逆にそれが侵害されることの「問題性」を認識して、人権侵害を解決せずにはいられないとする、いわゆる人権意識が芽生えてくる。つまり、価値志向的な人権感覚が知的認識とも結びついて、問題状況を変えようとする人権意識又は意欲や態度になり、自分の人権とともに他者の人権を守るような実践行動に連なると考えられるのである。」

 

出典:文部科学省:人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]-指導の在り方編-, 2008.

 

人権教育においては、これまで知的理解に偏っていた人権に関する学習を、人権が持つ価値や重要性を直感的に感受し、それを共感的に受けとめるような感性や感覚を併せて育成していくことが肝要です。

 

なお、教職員は、児童生徒に日頃から関わり、指導をすることでその心身の成長に影響を与えるため人権感覚を研ぎ澄まして、指導をすることが大切です。

 

つまり、人権尊重の理念を十分に理解することや、一人一人の児童生徒の人権を尊重するために、学校の教育活動を常に検証することが求められます。

 

自らの言動が児童生徒の人権を侵害することにならないように高い意識をもつことが必要なのです。

 

人権感覚と教室環境

 

人権感覚を身に付けるためには、学級をはじめ学校生活全体の中で自らの大切さや他の人の大切さが認められていることを児童生徒自身が実感できるような状況を生み出すことが大切です。

 

そのためには、自分と他の人の大切さが認められるような環境をつくることが、まず学校・学級の中で取り組むこととして挙げられます。そこで、具体的に教室環境の観点から説明をしていきます。

 

子どもたちの作品は一人一人の思いが込められています。しかしながら、その中に他者の心を傷つけたり、人権侵害に当たるような表現があってはなりません。そのような作品を掲示するということは、教師がそのことを容認しているというように受け止められる可能性が生じます。

 

ひとり一人の表現を尊重することはもちろん大切ですが、その表現によって他者の人権を脅かすものであってはならないのです。また、子どもの作品に誤字脱字があった場合は、子どもと一緒に修正をしてから掲示することが大切です。

 

また、教師は子どもたちの作品を掲示する教室に忘れ物を示す一覧表や、課題の提出状況をまとめた資料、子どもたちの身体の情報を示す資料を掲示することは、子どもたちのプライバシーに関わる重大な問題です。このような情報は掲示してはなりません。

 

教師自身が子どもの気持ちや痛みを想像してから、掲示物を掲示するかを整備していくことが大切です。人権感覚を研ぎ澄ませて、多数の人が目にするものであるという観点から教室環境の最終点検を行うことが肝要です。

 

教室環境についてのポイントの詳細は、「自他を認める学級経営に向けた教室環境づくりのポイントを紹介します。」をご覧ください。

 

 

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