子どもたちが問題解決していくための授業実践を紹介します。

学級では子どもたちが対立することが起こります。教師が仲裁役として問題を解決することも大切な時もありますが、子どもたちが自分たちで問題を解決していく資質・能力を育成していくことが大切です。

 

大人は対立した経験から様々な解決方法をもっていますが、子どもたちは成長の過程にあります。自他を認め合うためには、対立の解決方法を授業で学ぶことが大切です。

 

この記事では、対立の場面について子どもたちが問題解決の重要性を体験的に学ぶ、参加型人権学習「どうすれば いいかな」について紹介します。

 

参加型人権学習「どうすれば いいかな」の学習成果

 

結論から伝えます。参加型人権学習「どうすれば いいかな」の学習成果は、 子ども同士の対立を子どもたち自身が解決していくことや,、自他を尊重していくことを体験的に学び、人権感覚を醸成することが期待できます。以下に主な授業分析の結果を3点を示します。

 

 

一つ目は、他者との対立を解消するためには, 譲り合うことが重要であることに気付くこと

 

 

二つ目は、日常生活の対立を回避するために対話や譲り合うことへの意欲を示すこと

 

 

三つ目は、他者と協力をすることにより多様な意見が生じることを実感すること

 

授業記録から、当該授業は小学校1年生が対立を解決するために対話したり、 譲り合ったりしながら、 他者と協力する活動を通して,、自他を尊重することを体験することが確認できました。

 

それとともに, 学習成果の分析結果として, 人権教育を通じて育てたい資質・能力の価値的・態度的側面と技能的側面の構成要素を抽出することができました。

 

当該授業実践は、子ども同士の対立を子どもたち自身が解決していくことや,、自他を尊重していくことを体験的に学び、人権感覚を醸成することが期待できます(河野辺, 2018)。

「どうすれば いいかな」の学習指導計画

「どうすれば いいかな」の主な学習活動の特徴としては、 2匹の犬が争っている状況を解決するための方法を児童が主体的に考えるためのグループ活動やそれを共有するための活動が設定されています。また, 児童が考えた解決方法を基にロールプレイをして, 対立した場面の解決方法を体験していきます。
なお、「どうすれば いいかな」は、奈良県教育委員会が刊行している人権教育学習資料集『なかまとともに・小学校1』を活用した実践です。
ワークシートは、「奈良県先生応援サイト」が公表しているので、リンク先を貼っておきます。リンク先の「どうすれば いいかな」をクリックしてください。

ねらい: ・自分たちで問題解決していこうとする態度を養う。・友達と十分に話し合い、協力する態度を養う。

 

過程 主な学習活動 指導上の留意点
・日頃の学校生活で楽しかったことや困ったことを出し合う。 ・日頃の子どもたちの様子をよく観察するとともに日記や終わりの会での振り返りを通じて, 子どもたちの状況を把握しておく。
・絵を見て, どんな話かを考えるとともに, 2匹ともエサを食べることができる方法を考え, 考えた方法をグループごとに発表し合う。 ・2匹の犬の状況の場面

(a)ロープでつながれた2匹の犬が, エサを見つける。

(b)お互いに引っ張り合ってエサを食べることができ

ない。

(c)2匹で考える。

・なぜ, エサを食べることができないのか, 原因を明らかにしてから考えさせる。

・考えた解決方法を基にして, ロールプレイをして確かめる。 ・自分たちで問題解決しようとする活動を支援する。

・合図を決め, ロールプレイの開始と終了を明確にする。

・問題を解決した経験を確認し, 学習を通して気付いたことや分かったことを振り返る。 ・自分たちの生活の中で, 他者との対立の問題をうまく解決できた経験を出させる。

実際の授業の様子

実際の授業では、 学習過程①において、 学校生活で困ったこととしては、 ある児童が「一輪車のことなんだけど、 お友達もこの一輪車を乗りたいし、 私もこの一輪車に乗りたいってなって、 小さなケンカになっちゃった」と発言し、 学校生活で身近な他者と意見が対立した場面を想起した。
学習過程②では、 絵を見て、「どっちとも自分のことしか考えていなくて、 人のことを考えていない。」という意見が出された。以上のことが対立の要因になっていることを学級全体で確認した上で、 対立をしないでエサを食べることができる解決方法について6人ずつのグループ(A~Dの4グループ)に分かれて話し合った。

学習過程③において、 グループAは、 「仲間と協力して、 対立している問題を解決する」、 グループBは、 「お互いに協力して、 エサを半分ずつ食べることで問題を解決する」、 グループCは、 「先に譲ることで問題を解決する」、 グループDは、 「お互いに協力してエサを一か所にまとめて問題を解決する」というロールプレイを通して対立の解決過程を体験した。

 

学習過程④では、 問題を解決していくために大切なこととして、 「お互いに協力できる言葉を使って、 自分たちでどうすればいいかを考える」や、「2人で譲り合うこと」を学級全体で共有した。

 

以下が、授業後の分析結果である(河野辺, 2019)。

 

 

なお、授業分析の詳細については、

河野辺貴則「小学校1年生における参加型人権学習の学習成果に関する一考察   ― 人権教育を通じて育てたい資質・能力の構 成 要 素 の 抽 出 を 通 し て ―」(2019.8 日本学校教育学会、『学校教育研究』34号、【査読付】)をご参照ください。

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