多様性を尊重していくことは、とても大切なことです。
しかし、子どもたちにどのように指導していけばいいのかが分からないという声も度々聞こえてきます。
この記事では、多様性を指導する際に日常生活と関連づけて教える方法を紹介します。
授業の導入で写真を提示します。


ビニールハウスには、苺農家さんが大切に育てた色とりどりの苺が並んでいます。
美味しそうな苺を食べるために、じっくり観察してみると、真っ赤な苺、少し白い苺、大きな苺、小さな苺、歪な形の苺、左右対称の苺、まだまだ熟していない苺・・・一つとして同じ苺はありません。
一口に苺といっても、その様相は多様です。
とても美味しい苺だったので、20個は食べたと思います。
お腹が一杯になるまで食べました。そして、一つ一つの苺の味は「ちがう」ことに気づきました。
苺も生きています。
だからこそ、多様な在り方があります。

一つ一つの個性を大切にするためには、一つ一つの個性を理解することから始まります。
そして、言葉を発することがない苺の個性を理解するには、観る力や長年の経験が必要だと思います。
苺農家さんは私のような素人とは違うものの見方をして苺を大切に育てていることが想像できます。
教師も一人ひとりの子どもたちの多様性を観て、認めていくことが大切です。
多様性を学ぶための授業方法としては、参加型人権学習をおすすめします。
これは、参加者が相互に学び合う過程を通して、気付きや発見を促すための学習方法です。
- ほぼ同じ大きさのジャガイモを参加者の人数分
- 紙袋
同じように見えるものでもそれぞれに特徴があり、ちがいがあることを理解する。
①人数分のジャガイモが入った紙袋を各グループに配布する。
②グループごとにジャガイモを取り出し、自分のジャガイモを一つ決める。
③自分のジャガイモを1分間観察し、その特徴を考える。
④みんなのジャガイモを紙袋に全部もどす。
⑤紙袋からジャガイモを取り出して、自分のジャガイモを見つける。
⑥自分のジャガイモの肯定的な特徴をグループの中で紹介し合う。
⑦進行役(教師)は、「同じように見えるけどもそれぞれに特徴があること」や、「他の人の多様な見方の大切さ」を伝える。
⑧参加型人権学習を通して、気付いたり、学んだりしたことを書く。
*参考文献:東京教育委員会『人権教育プログラム(学校教育編』2013.
中川喜代子『人権学習ブックレット④ 寛容性』明石書店, 2000.

多様性を学ぶためには、それらの基盤となる人権についても学ぶことが重要です。
2011年の3月11日に東日本大震災が発生しました。
避難所からもたらされる生活上のニーズのどれもが私たちの人権と関わっています。
詳しい授業実践の分析結果は、こちらの「自他を認めるための授業実践の具体例を紹介します」をご覧ください。
次に「安全」と「飲料水・食料」を優先順位の上位に位置付ける傾向にあることが授業記録から確認できます。
これら上位に位置づく、「生命」、「安全」、「飲料水・食料」は、生存のための観点といえます。
そして、「情報」、「歯磨き・入浴」、「プライバシー」、「住宅」、「仕事」、「人としての尊厳」については、人間としての文化的な生活に関する観点といえます。
これらは、国際条約として具体化された「国際人権規約」の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」に関連しています。
わかりやすくいうと、安全を志向する権利や、人間としての最低限の文化的な生活を営む権利のことです。
つまり、ランキング型の参加型人権学習は、国際的に定められている人権に関する項目についての優先順位を考えることによって、権利というものを自分の生活に関連付けながら、学ぶことができます。
そして、他者の価値観と比較し、合意をしていくための活動によって、人権が補完的な関係性にあることや、お互いの意見や価値観は同一のものではないことを学んでいきます。
それでは、価値観が違う人間同士で営んでいる社会で生きていくためには、どうすればよいのでしょうか。
教室の中で学んでいる子どもたちにも様々な価値観があるとともに、特別な事情を抱えている子どもがいるかもしれません。
このことを、教室で子どもたちと先生が一緒に考えていくことが大切なのです。

多様性を尊重していくことは、一人ひとりの人権を尊重していくことです。
そして、他者と歩み寄るためには、他者の意見を傾聴し、多様性の意義を理解する必要があります。
自分の大切さとともに他の人の大切さを認めるという人権教育は、世界基準であり人類が築いてきた文化的な財産です。そして、それらを築くためには教師の人権感覚が大切です。
教師の人権感覚については、「1%の「もしかしたら」を想像する人権感覚と声かけが、居心地がよい学級経営には欠かせません」をご覧ください。